遅筋と速筋から見る競走馬の適性

 

一騎当選のチャイさんが面白い考察をされていて、前に書き起こしたものの上手く結論に繋がらず下書きのまま放置してた記事を思い出し、それを引っ張り出しこねくり回してみました。

 

少し引用させていただきます。

一般的に筋繊維には2種類あると言われています。速筋と遅筋です。速筋と遅筋の違いは、筋繊維の収縮速度が違う事で区別され、速筋は素早く収縮する事が出来るために瞬発力を引き出す際に用いられ、遅筋はゆっくりと収縮するために持久力を引き出す時に使われると言います。

速筋は糖質をエネルギー源として利用しますが、体内に貯蔵される糖質量(ブドウ糖)が限られるため、自然と限度があります。一方遅筋は脂肪を主エネルギー源として利用するために、長く使える利点があります。

速筋は無酸素運動時に用いられ、遅筋は有酸素運動時に用いられます。

速筋と遅筋は状況に応じて利用されますが、その使われる境界をATポイント(無酸素性作業閾値)と呼ぶらしいです。有酸素運動の限界値という事ですね。

速筋と遅筋の割合は遺伝によって決まる、という話があり、これは諸説ありそうですが、一応その前提を維持した条件で調教の役割を考えると、速筋の運動性能向上が言い換えれば乳酸の代謝性能向上を目的とする事によって、0.1秒でもより長く速筋を使う事を目的とする事なのかと仮説です。

 

人間の場合、短距離選手と長距離選手では遅筋と速筋の割合に差があると言われています。マラソン選手を調べたところ、遅筋線維が約8割、速筋線維が約2割という結果が出たそうです。一般人の遅筋線維が約6割ということからみると、収縮速度は遅くとも、疲労しにくい(ゆっくりと収縮するために持久力を引き出す)遅筋肉の割合が長距離選手は多いと言うのが分かりますね。一方、短距離選手における筋肉線維の割合を調べたところ、長距離選手のそれとは逆に、疲労しやすい(素早く収縮することが出来るために瞬発力を生みだす)速筋線維が約8割と多い事が分かったそうです。

では、ステイヤー・スプリンターと適性面で両極端に扱われる競走馬においても、彼らの違いも人間の短長距離選手の違いに見てとれる筋線維の違いはあるのでしょうか?答えは科学的には「無い」となっているそうです。サラブレッドの筋線維の割合は、長距離馬短距離馬の違いに関わらずほぼ遅筋:速筋=2:8の割合だそうです。人間でいうところの短距離走者です。たしかに言われてみると、長距離走と言えど人間の長距離走のように2時間(フルマラソン)も掛けて走り競うレースは無く、長くてイギリスで行われている4000Mの競走が最長(平地のみ)でしょうか。つまりわずか数キロ程度の距離間による違いしか競われてこなかった。明らかに異なる筋線維を持つタイプを生みだす必要が無かったサラブレッドは、血統的に速筋を優勢として発展してきたということでしょう。藤澤先生だか、誰の言葉かは忘れましたが『サラブレッドは本質的にマイラー』この言葉は上記概念を捉えているように思えます。

考えてみれば、本来馬は野生の草食動物。野生において天敵から身を守ってくれるのは自らの能力だけであり、そのために彼らに与えられた能力は敵を発見する広い視野と走力です。全方位に動かせる耳・眼から情報を早期に収集し、いかに素早く危険から逃げられるかが、馬にとっての生き残るための本能。逃げ切れなかった個体は淘汰されますから、逃げる際のスピードの爆発力が肉食獣より上でなければならないのです。

そう考えると、現在、世界における父系の主流がDanzig、Mr.Prospector、StormCatである理由が何となく分かります。

速筋が劣っている遅筋タイプの馬はサラブレッドの『種』としての本質から逸脱していることになります。遅筋が発達した種が何代も続き蓄積させていったら、それはいかに素早く天敵から逃げるという生き残るための本能を自ら失うことになりますからね。

さて、サラブレッドが本質的に速筋タイプであることは分かった。でもスプリンターズSと天皇賞春に出走するような馬の造りって違いますよね。短距離走における黒人選手みたいな馬が天皇賞春やアスコットゴールドカップを勝てるとは思えません。ただそれは『馬は本質的に速筋タイプだが、生まれつき微弱な違いがあり、後天的にトレーニングなどである程度筋肉の質に変化を付けられる』と考えられるでしょう。さっき述べたDanzig系から実績として短距離馬も長距離馬も生まれているのは、そういった理由があるのではないでしょうか。スタミナを生成するミトコンドリア(遺伝的に遅筋の割合を増やす役目をしているのかどうかは資料が無く不明で推測ですが…)は母からしか伝わらないと言われているように配合によって伝わる筋線維容量の微弱な違い、そして後天的に「造られる」遅筋。どういうトレーニングをしていけばそれぞれの筋線維が伸びていくのかは、ここを読んで下さっている読者の方なら想像が付くと思うので割愛しますね。

チャイさんが考察されている脚質については、この骨格・筋肉質などの違いにも見てとれるでしょうか。例えば短距離馬(1200M前後を走っているのでそう定義されている)でも大きな走りをする馬がいます。そういった馬は一完歩が必然的に大きくなりますので、他馬から相対的に見て「バテ無いけど一瞬の加速力に劣る」タイプに映るでしょう。逆に肩甲骨が立って硬い筋肉に覆われていると前脚の稼働域が狭くなると一完歩が狭くなることが予測されますので、持続力というより加速力に優れたタイプと見て取れそうです。骨格による違いを踏まえた上で、振りの加速力(速さ)や振りの最高スピードの維持力(回数)を筋線維がもたらす所であり、それらが上級戦で競われる所の「1Fを速く走る能力」だったり「最後までより速い振り抜きを行う能力」ではないかと思います。そこを包括したのが最後チャイさんが纏められていた

 

競走馬が加速していく時の脚質の違いというものが、筋繊維の割合バランスの違い(血統・筋肉の質)と、走法(体型)による違い

 

という一文でしょうか。

まあ、『トップアスリートの条件は「素質」「環境」「意識」の3つで、後半の2つがより大事』なんて言葉があるように、大切なのは環境(育成~厩舎)や意識(気性など)なんですよw いくら抜群の馬体をした馬を最高の厩舎に預けたって、ヤル気が無ければ走るもんも走りませんけどね!

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遅筋と速筋から見る競走馬の適性」への2件のフィードバック

  1. これほど濃密で丁寧な洞察による考察の下書きを引っ張りだす事が出来て、勢いで突貫記事を書いて良かったと思っています(笑)

    短距離と長距離における筋肉量の違い、深く納得しました。確かになるほどですね。自分でネタ振っておきながら、この考察には答えがたくさん含まれています(爆)角居厩舎の意図もようやく正確に掴めた気がします。

    ヤル気、と聞いてバリアシオンもそうですが、ヨシトミ先生も思い出してしまいましたw。予想行為の面白さと比例して奥深さは底知れないものですね。

  2. >チャイさん

    いえいえ、眠ってる記事を呼び覚まして下さってありがとうございますw
    自分で書いておきながら、しっかり整理できている訳では無いので散らかった文章になってると思います。もっと的確な裏付け・科学的根拠が取れればいいのですが。。

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