競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ 背中篇

まずは


以前こんな記事を書いていたのですが(競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ)、3年経って新たに分かってきたことや見えてきたこともあるので、バージョンアップさせて纏めておこうと思います。

今回は背中篇。あと「筋肉篇」と「飛節・繋ぎ篇」を記事として纏める予定ですが、予定は未定です。

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馬の背中。よく騎手のコメントなどで見かけるのが「この馬の背中は素晴らしい、乗り味が良い」というもの。これは実際に馬が乗った事のない人では分かり得ない感覚なので、どんな背中が良い背中なのかはっきり言ってよくわかりません。ですので、これから書くことは、あくまで外から見た人間が考える良い背中、というのをまず前提条件とさせていただきます。勝手に解釈した自論ともいうべきでしょうか。

背中の役割


以前書いた記事からの引用になってしまいますが、

では、背が長いとどうなるのでしょうか。長さがある吊り橋を想像していただくと分かるでしょう、短い吊り橋なら支点にブレが生じずらいので、吊り橋を最初から最後までダッシュしてもフラつくことは無いのですが、長い吊り橋をダッシュすると、真ん中当たりで相当なフラつきが生じてしまうはずです。もちろん馬の背は吊り橋のように両サイドからだけ支えてるのでは無く、背にある筋肉でも支えているのですが、背が長いとその筋肉に相当な負担が掛り疲労してしまいます。これが長い背がトモの推進力を減殺してしまう要因ですね。そして大切なのが腹の長さ、胴のバランスです。長躯短背というのは背が短く、胴に長さがあることを言います。背も胴も短いような状態は、肢だけが長いというような状態で、踏み込み込んだ時に後肢が前肢の球節にぶつかってしまい、踏み込みが浅くなってしまいます。

馬の背中を腰とキ甲の2点で支えられている吊り橋と考えてみてください。
グラグラ揺れる吊り橋を始点から終点までダッシュするのは容易なことではありません。吊り橋が確りと固定されてた方が走りやすいですよね?それと同じで、背中が確りしている馬に比べて確りしていない馬は、後脚で蹴りあげ生み出した推進力を、より効率良く前へと伝えることが出来ません。人間が吊り橋を走りぬけてるのを、後脚で蹴った推進エネルギーと置き換えてみてください。乗り味が良いと騎手がコメントをするのは、背中で発生するグラつきや揺れのようなものが少ないからなのでしょうね。馬が推進するエネルギーをいかに効率良く減衰させないで前へ伝えることができるか、その役割を果たしている橋渡しの箇所が背中という事なんだと思います。

じゃあ背中が確りしていればいいのか


では、鉄パイプのようなもので支えられた頑丈な吊り橋だったらグラつかない。馬の背中も鉄板のように確りしていた方がいいのか?という疑問が湧いてくると思います。鉄板とまでは言いませんが、馬の背骨はほとんど曲がりません。骨格上曲がらないように設計されているおかげで人を乗せられるわけですね。
ただ、実は背中は「少し」曲がるんですよ。
馬は推進力を生みだすために後脚を後方に蹴りますが、もっと推進力を生みだそうとより後方に蹴ろうとするには、その準備として後脚をより前方に引き付けなければなりません。これは想像がつく動きだと思います。遠くに矢を放つために弓を引き絞るようなことですね。しかし、より遠くへ蹴るために後脚を前方に引き付けるのは、後脚の動きだけで行っているのではありません。この時、以前記事で引用させていただいた、

ディープインパクトの走るフォームをVTRで撮影して検証してみると、後肢を前方に振り出すとき、骨盤が大きく前方に沈み込んでいたのだ。よりチーターのような肉食動物に近い、体全体を使った効率の良い走りであったと言うことだ。肉食動物系の走るフォームの最もたる例は、角居勝彦厩舎で調教されたヴィクトワールピサではないだろうか。この馬のフォームは、500kgを超える大型馬ということを感じさせないほど、軽くて美しくて、そして力強い。少し大袈裟ではあるが、そのトモの踏み込みは草食動物のそれとは思えない。頭が小さく、手脚が長いとい生来の体型もあるが、全く無駄のないフォーム、いやいや、全身を使った最も効率的にスピードが出せるフォームを角居厩舎で体得したからこそ、あれだけの次元の違う瞬発力を発揮できるのだ。その後肢の踏み込みの深さと、前肢の伸びには驚嘆せざるを得ない。皐月賞までに見せた末脚は異次元のものであった。

(Keiba Culture Magazine ROUNDERS Vol.1 -調教の全て P153- より)

チーターのような動きが求められてくる訳です。当時は腰の視点で引用させていただきましたが、実は、背中も「柔らかい」必要があるんですね。柔らかい背中?柔らかいと背中がたわんだりして、さっき言った「確りした背中」と相反するじゃないか!と思われるでしょう。すいません、もうひとつ上の次元として、確りしている前提でさらにその上柔らかい、という話と捉えてください。

柔らかい背中というだけでなく


柔らかい背中というのは、さらに大きな推進力を生みだす原動力となります。背中を丸めることで後脚をより前方に引き付け、背中を伸ばす(反る)ことで前脚をより遠くへ投げ出し体を目一杯伸ばして地面を掴むことができる訳ですからね。

ヴィクト背中2

上記は赤が背中が硬い馬、黄色が背中が柔らかい馬の動きを簡単に図にしてみたものです。ただ、これを可能にするには背中が柔らかいだけでなく、背中の筋肉の伸縮力の強さ、弾力性が必要となってきます。ただ背中が柔らかく大きく体を使えたとしても、弾性を失ったゴムのようにそれが緩慢になってはいけません。柔らかい背中を支える筋肉の強さ(弾力)が必要ということですね。前回記事にした今年のドイツダービー馬SeaTheMoonはおそらく、強靭なバネを備えた背中の筋肉を持っているのではないかと思いました。

良い背中の見極めかた


馬に乗ることが出来る人は、背中の良い馬とそうでない馬に乗り比べて違いを身を持って理解するのが手っとり早い方法でしょう。ただ、自分もそうですが馬に乗れる環境に無い人にそれは無理なお話…。
なので、背中の良い馬を見極める方法、それは月並みですが、背中の良い(とされる)馬とそうでない馬を見比べて、違いを見出し、こういう動きが背中が良いとされる馬なのか、と頭に覚え込ませるしかありません。自分は、歩かせた時に姿勢が確保できている状態で、後肢→前肢→後肢→前肢の常歩のリズムに対して背中の動作に無駄が無く、後ろから前に推進力が伝達するのにエネルギーのロスが無いように映る馬が背中の良い馬なのではないかと解釈しています。リズムに無駄の無い=速く大きく歩けている馬という意味ではありません。一口クラブの募集動画などでは、横からではなく馬を後ろから見た映像でその様子を判断できると思います。背中の良い馬は、後ろから見た時に本当に無駄が無く弾むような動きを見せてくれます。だからと言って激しく上下動するのではなく背中がブレずにまるで馬が動く歩道に乗って地面に対して水平移動しているような、そういった動きを見せてくれる馬が、まれにいます。
先に写真に出したディソサードの11ことレッドリヴェールは、

普通ですね(笑)
悪くは無いけど、背中だけで言うなら特別良い背中をしている馬だとは思いません。
個人的に今まで見た(動画やパドックなどで)中で一番良い背中をしているなと思ったのは、サンデーRで募集されたオリエンタルアートの08という馬です。この馬の募集時動画は今でも脳に焼き付いています。また、背中の良し悪しの素質を見極める、ということであればパドックではなく一口クラブの募集時など若駒時の動画を見た方が良いと思います。背中もトレーニングで筋肉が付いたり逆に減ったり、筋肉痛で凝り固まったりしている場合があるので。

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競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ 背中篇」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: 競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ 頸篇 | ローランの歌

  2. ピンバック: 競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ 頸篇 | ローランの歌

  3. ピンバック: 競走馬の馬体を評価する個人的指標のまとめ 肩篇 – ローランの歌

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